オホス・デル・サラード登山記 (5) 順応登山(6,300m地点)

チリ

2025年1月22日

当初は今日22日に高度順応の登山、翌23日が登頂日、24日は予備日となる予定でしたが、期間中は好天の予報で、少しでも登頂の可能性を上げるため、ガイドのクリスティアンの提案により、23日は終日ラグーナ・ヴェルデで休息し、24日を登頂日とすることになりました。

というわけで、この日は6時起床…の予定でしたが、うっかり寝坊をしてしまい、ガイドに叩き起こされます。隣のラウルも一緒に寝過ごしていました。気を取り直して急いで準備し、車に向かいます。2日前の装備に加え、念のためにアイゼンとピッケルも持っていきます。

ラグーナ・ヴェルデからアルゼンチン国境とは逆方向、コピアポ方面に20分ほど走ると、遂にオホス・デル・サラードが姿を現しました。初日にもこの道路は通っていましたが、曇り空で見えなかったのです。

オホス・デル・サラードが姿を表す

ここを左折し、オホス・デル・サラードを正面に見ながら砂利道を走ると、やがてオフロードとなり、1時間と少しで標高5,250mのアタカマキャンプ(Atacama Camp)に着きます。通常の行程ではここをC1とすることが多く、前回も何泊かしましたが、今回はトイレ休憩のみで通過します。

アタカマキャンプから山頂を望む

今回は素通りするC1のアタカマキャンプ

この先には、5,800mを過ぎた地点にC2となるテホス小屋(Tejos Refuge)があり、前回はアタカマキャンプから往復しましたが、既に高度順応済みのため、この区間も車で突っ切ります。歩ける道とはいえ、凄まじい悪路をトラブルなく越えていくガイド達の運転技術は見事です。テホス小屋を少し越えると、少し開けた場所があり、車を停めてここから登山開始です。

ここから歩き始める

現在地の標高は5,900mで、山頂との標高差は1,000mほどです。この日は高度順応のため、6,300m地点まで行く予定です。全員一列になり、私は最後尾から歩き始めましたが、すぐに隊の中でペースに差が出始めたので、追い抜いて前の方に移動し、クリスティアンのすぐ後ろを歩きます。普段は6,000mまでは1歩に1呼吸ほどのペースでしたが、今回は高度順応が万全で、ゆっくりとした1呼吸で1.5歩くらい進めています。

しばらく進むと傾斜が緩み、広い場所に出ました。ここが6,000m地点で、2日前のサン・フランシスコの山頂と同じくらいの標高です。その先は傾斜が増し、ジグザグの登りに入ります。折り返す部分は急なうえにクリスティアンの歩幅が広く、身長160cmで足の短い私にはなかなか難儀で、2,3mほど離されては、斜めに直進する部分で追いつくのを繰り返し、登っていきます。後ろを振り返ると、オーストリア人のステファニーがいないことに気がつきました。体調が万全ではないようで、車に戻ったようです。

歩くこと3時間ほどで、今日の目標である6,300m地点に到達しました。高度順応のため、しばらく斜面に滞在します。普段は標高が上がるにつれ食欲が落ちますが、引き続き快調で、バナナやシリアルバーを食し、魔法瓶のスポーツドリンクを飲み干します。

オホス・デル・サラードの6,300m地点

ふと山頂方面を見上げると、フィンランドの登山家ロッタが、ペニテンテスの先のトラバースを歩いていました。今日登頂を目指すようです。下からはラウルとセバスチャンが、ガイドのマリオと一緒にゆっくりと、しかし着実に登ってくるのが見えます。

下の方にラウルとセバスチャン、ガイドのマリオが見える

空の色が濃い

現在地の標高を確かめる

しばらく滞在した後は、車を停めた場所まで下ります。登りは問題ありませんが、急な下りはダブルブーツに当たって小指が痛みます。我慢できないほどではないので、登頂日は痛くても帰還さえできれば問題ないと割り切りました。下りてくると、サン・フランシスコでも見たペニテンテスが傍にありました。近寄ってみたのは初めてかもしれません。

不思議な形のペニテンテス

車で戻る途中、C1のアタカマキャンプで故障した車があり、クリスティアンが直していました。こうしたトラブルにも対応できるのが頼もしいです。登山者はポーランド人で、この僻地に何と個人のグループで来たとのことです。オホス・デル・サラードの初登頂がポーランド人ということもあり、人気の山なのだそうです。

車でラグーナ・ヴェルデに戻ってくると、ステファニーが登頂日は辞退するとのことでした。直後にはアコンカグアが控えており、そちらを優先するそうです。気の良い彼女はムードメーカーで、ともに山頂に立てないことは残念ですが、仕方ありません。ジョージも今回は辞退するようでした。

シリオの料理

今日登頂して下りてきたロッタは、我々より一つ下、C1のアタカマキャンプから標高差1,600mを歩き、6時間で山頂に着いたそうです。この日の登山者は全員脱落した中、登頂したのは彼女だけでした。数日をキャンプでともにしましたが、今日のうちに出発するそうで、ひと足先にお別れです。

ちなみに、最速記録はガイドのマリオで、同じくアタカマキャンプから、何と3時間ほどで登頂したそうで、とてつもない離れ技です。ラウルをサポートしてきたマリオは、セカンドガイドながら大の実力者で、クリスティアンもゲームにちなみ「スーパーマリオ」と称えていました。

2025年1月23日

明日の登頂日を控え、最後の休息日です。いつものようにダイニングテントでゆっくり過ごし、午後にはロープの使い方のレクチャーがありました。オホス・デル・サラードの山頂付近には、岩場をよじ登る箇所があります。初めての経験ですが、技術的ではないというので、体力を温存できれば突破できるでしょう。

夕食は待ちに待ったシリオの料理です。深夜には出発なので軽めのスープです。ここまで順調に来られたのは、彼のおかげでもあります。登頂の成否に関わらず、チップを渡そうと決めていました。

夕食のスープ

夕食後、最後のミーティングがありました。隊を2つに分け、先発隊のラウル、セバスチャン、ブルーノは午前1時に出発、残る5名は追って午前3時に出発します。昨日の6,300m地点付近で落ち合い、その先は臨機応変に再編しながら進むとのことです。ブルーノは健脚ですが、車の人数の都合で先発隊に回ったのでしょう。私も荷物の準備を済ませてキッチンテントに運び、早々と就寝しました。

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