オホス・デル・サラード登山記 (2) コピアポ – ラグーナ・ヴェルデ(4,300m)

チリ

2025年1月16日

ペルーでの高度順応を終え、いよいよチリに入国です。首都サンティアゴで乗り継ぎ、最寄りの空港に着きました。1年前と同じ、どんよりとした曇り空の砂漠を見て思い出すのは、そのときの山行です。私の実力不足もさることながら、とあるガイドの評判が参加者の間で芳しくなく、後味の良い山行とは言い難かったのです。

空港は海岸とコピアポの中間にある

そんなこともあり、正直なところ、今回はあまり乗り気ではありませんでした。アコンカグア、チンボラソ、ワスカランと比べ、山の知名度が低いこともありました。二度目も登れないのではないか、他の山にすればよかった、といった思いもよぎりました。しかし、もうトレーニングや高度順応をして、現地まで来たのです。コピアポに向かうタクシーの中、最善を尽くそうと、自分を奮い立たせていました。

コピアポはアタカマ砂漠のオアシスに栄え、銅の採掘で発展した都市です。ホテルにチェックインし、外に出て散策しようとすると、すぐ隣にペルー料理店の看板が見えました。つい前日までペルーにいて、料理に感銘を受けたばかりだったので、これは何かの縁と思い近づくと、何と前回も入った店でした。1年前にもこの通りを歩いていたのだと、点と点が線で結ばれた感覚になった私は、迷わず店に入り、気に入った海鮮の麺料理を再び注文しました。それはそのときと変わらない味でした。

ホテルから眺めるコピアポの街並み (2023年12月)

前回も入っていたペルー料理店

中華の影響を受けた海鮮入りの麺料理

コピアポは人口10万人ほどの小さな都市で、日没を迎えると店が一斉に閉まり、遊ぶような場所はありません。翌日からの山行に備えて荷物の仕分けを済ませ、この日からダイアモックスを服用し、早めに就寝しました。

2025年1月17日

いよいよ今日からツアー開始です。12時頃、サブガイドのクラウディオがホテルへ迎えに来ました。参加者1名も一緒です。ツアーの残金をクラウディオに渡し、銀行で一緒に入金した後、スーパーへ買い出しに行きます。私はヘッドランプ用の予備の電池を買い足し、ダークチェリーとバナナを買いました。高所では食欲が出ないことがあるので、なるべく食べやすいものを用意します。

スーパーの生鮮コーナー

買い物を終え、他のメンバーがいるホテルに向かい、チーフガイドのクリスティアン、そして参加者3名と合流し、2台のピックアップトラックで、ベースキャンプのラグーナ・ヴェルデに移動します。アタカマ砂漠は地球上で最も降水量が少ないとされ、そのため付近に集落やインフラはありません。1年前に挑戦したときは、ピックアップトラックに荷車を連結し、大量の水や燃料を運んで行きましたが、今回はないところを見ると、キャンプに十分な蓄えがあるのでしょう。

コピアポを出ると、車は次第に標高を上げ、不毛のアタカマ砂漠に入ります。マリクンガという広大な塩湖に差し掛かったところで、アルゼンチンとの国境検問所があります。実際の国境より100km手前にあり、この先は緩衝地帯のような扱いになります。想像ですが、過去に登山者が山を越え反対側に降りたりして、問題にでもなったのでしょう。

検問所を通過し塩湖を抜けると、正面にはチリ第2の高峰、トレス・クルーセス(6,748m)が見えてきます。この日は雲が厚く、すぐに隠れてしまいました。そしてしばらく走ると、荒涼とした砂漠にエメラルドグリーンの湖が見えてきました。ここがベースキャンプとなる、ラグーナ・ヴェルデです。

チリ第2の高峰トレス・クルーセス (2023年12月)

ラグーナ・ヴェルデが見えてきた (2023年12月)

ラグーナ・ヴェルデに着くと、ダイニングテントには4名の参加者が先に着いていました。今回の参加者は、イギリス、フランス、ドイツ、オーストリア、スペイン、ポーランド、ルーマニア、アルゼンチンからそれぞれ1名と、日本人の私で、男性8名と女性1名、計9名の大所帯です。

ラグーナ・ヴェルデ

隣のキッチンテントでは、コックのシリオが料理を準備し、セカンドガイドのマリオが手伝っていました。前回の業者のツアーでは、ガイド2人が車を運転し、テントを立て、料理も準備しなければならず、明らかに負担が大きく見えたので、こちらも遠慮しがちでした。今回はテントは常設、料理もコックが担当するので、ガイドも運転はするとはいえ、参加者の対応に専念できそうです。ありがたいことに、日中は衛星でインターネットも使えました。スタッフ皆が頼もしく、今回は期待できそうな気がしてきました。

我々のベースキャンプ

キッチンテントの周りには、既に個人用のテントが準備されていました。テントの相方、アルゼンチン人で恰幅の良いラウルは大のバイク好きの62歳で、アラスカからウシュアイアまで南北アメリカを縦断したり、ヤマハの工場見学に日本まで来たことがあるそうです。今回もサンタ・フェの自宅から2日半かけ、バイクでコピアポまで来たというので驚きです。

ラグーナ・ヴェルデの標高は4,300m。1年前に来たとき、初日は空気が薄く感じ、恐る恐る歩いていた記憶がありますが、今回は難なく早足で歩いたり小走りもできて、既にペルーでの高度順応の効果を実感しています。腹の調子も戻り、食欲も平地と変わりません。メンバーの雰囲気もよく、空港に着いたばかりの陰鬱な気分は吹き飛び、確実に山頂を目指していました。

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